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兵庫県立加古川病院

医療ニュース

The Medical News

2006年7月 第4号

目次

  1. 県立加古川病院における地域医療連携
  2. 当院における乳癌治療の現状について
  3. がん化学療法を受ける患者の悪心・嘔吐による食欲不振へのアプローチ
  4. 平成17年内科入院患者の推移
  5. 外 科
  6. 医療相談室について                 
  7. 緩和医療について
  8. 腹圧性尿失禁に対するTVT手術について
  9. 県立加古川病院皮膚科は2006年度から 3つの点が変わりました。
  10. サプリメントについて
  11. 編集後記
  12. お問合せ

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1.県立加古川病院における地域医療連携

加堂哲治

 県立病院構造改革推進方策の中で、「限られた医療資源を有効に活用し、良質な医療を県民に効果的、効率的に提供していくため、患者紹介システムの充実や医師会、他の医療機関等との連携強化を図るなど、患者様にとって安心してかかれる県立病院を実現するために、地域医療連携を一層推進させる。」ことが提言されている。
 しかしここ1〜2年の本院の地域医療連携の実態は、以前に比べ改善したとはいえ、必ずしも満足のいくものではなかった。地域連携が円滑にいっていない原因としては、次のことが考えられる。
(1) 紹介状獲得には熱心だが、逆紹介には不熱心。 (2) 病院主導で医師の取組が少ない。(顔の
見える連携の場が不足) (3) 紹介患者の受け入れ体制が未整備。(待たせる、紹介元への来院連絡や返書の不徹底) (4) 医師会との関係が不足。(医師会行事の参加に不熱心) (5) 連携先への働きかけ不足。(広報活動、幹部の挨拶回りの不足) (6) 連携重視の病院方針と実際の病院運営のギャップ。(時間外患者を断る) (7) 連携先への配慮の不足。(検査結果や経過のフィードバックが遅いなど) (8) 患者の視点を無視した病院・診療所の都合優先の紹介・逆紹介。 (9) 患者への説明や啓蒙の不足。
 当院の診療科の中には、努力しているところもあるが、病院と診療所のコミュニケーションや信頼感の不足、病院サイドの働きかけ不足、患者の連携に対する理解不足、患者への説明不足は否定できない。
 平成16年10月より地域医療連携室を開設した後、医療ニュースの発行(年2回)、地域医療連携ガイドブックの配布(年1回)などを行い、17年10月よりは放射線部・検査部の緊急検査受付を19:00まで延長し救急紹介に対応できるようにしたが、利用はまだまだ少ない。さらに18年4月からMSWを2名に増員し、逆紹介の徹底化や、5月から地域連携室に専任事務職員を配置し、初診予約・高額医療機器検査予約の迅速化・一元化を測っている。
 しかし、これらの改革は我々の一方向的なものでしかない。地域医療連携を支える基盤とは、病院・診療所の円滑なコミュニケーションと相互の信頼関係であり、それを築くには「顔の見える連携」の仕組みづくりが重要である。さらに今後は疾患を中心とした連携が進むことが予想されるため、疾患勉強会や症例検討会・病院見学会・院内講演会のオープン化など、病院の医師と診療所の医師が、互いに顔を合わせて交流できる場をできるだけ数多く作っていく必要がある。そして、そのはじめとして、本院では今秋地域の医療機関との交流会を企画している。
 当院が診療の中心の一つにしている生活習慣病は現在増加の一途をたどっている。これからは糖尿病や肝疾患、高血圧などの循環器疾患、喘息などの呼吸器疾患などは生涯にわたる医学的な管理が必要であり、病院・診療所間の疾患別医療連携が不可欠となる。疾患を中心とした病診連携システム、つまり「共同診療システム」を今後ぜひ押し進めていかなければならない。

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2.当院における乳癌治療の現状について

外科   佐古田洋子

 日本女性の癌罹患率の第1位は乳癌であり、現在年間35000人が発症している。当院では1996年より乳癌の診断と集学的治療に取り組み現在も積極的に乳癌治療を行っている.当院は乳癌学会の基準を満たした認定施設であり、筆者は乳癌学会の定める乳腺専門医である(現在兵庫県で12人)。2005年は116症例の原発性乳癌の手術を施行し、それ以外に手術不能症例の化学療法、他院手術の再発症例等も受け入れている.以下診断と治療の現状について簡単に説明する.

1. 診断
 乳癌の診断にはマンモグラフィー、エコー、細胞診、組織診、造影CT、造影MRI等を用いる.当院では2004年3月にMDCT(東芝、TSX?101A/5を導入、2006年4月にMRIを更新した(Phylips,Achieva Intera 1.5T).新機種のMDCTとMRIはどちらも解像力にすぐれており、乳腺の質的診断のみならず、乳房温存療法を行う上で必須の癌の拡がり診断に有用であり大きな武器になっている。

2. 手術
a.乳房温存療法について
 乳癌学会は1999年に乳房温存療法ガイドラインを発表した。これによると適応は

  • (1)腫瘍の大きさが3cm以下(現在は 整容性が保たれる場合は4cmまで許容)
  • (2)各種の画像診断で広範な乳管内進展を示す所見がないもの
  • (3)多発病巣のないもの(ただし2個の病巣が近接し整容性と安全性が保たれれば適応外とはならない)

  • (4)放射線照射が可能な者。従って以下のものは原則として除外
    • a) 重篤な膠原病の合併症を有するもの
    • b) 同側胸部の放射線既往照射のあるもの
    • c) 患者が照射を希望しないもの
  • (5)患者が乳房温存療法を希望すること

を満たす者となっている。
 乳房温存療法を受ける患者の割合は年々増加し2003年の全国統計では乳癌学会認定施設において48.4%に乳房温存療法が施行されたと報告された。当院における手術術式は、進行症例が多いこと、25回の放射線療法に対する拒否感が強い方が多いことなどから温存率はあまり高くなく昨年は44%であった。温存療法を行う上で最も大切な事はインフォームドコンセントをきっちり取ると言う事で、温存療法のリスク(術後の病理検索の結果で再手術の可能性、温存乳房に再発する可能性)について詳しく説明し同意を取得している。
b.センチネルリンパ節生検について
 sentinel nodeとは腫瘍からの直接のリンパ流を受けるリンパ節のことである。癌の転移はまずこのsentinel nodeから起こるとされており、ここに転移がなければ他のリンパ節に転移がないと判断することができる。sentinel nodeを同定する方法には色素法、RI法、とその両者の併用法があり、最も精度が高いのは併用法であるが、本邦ではRI管理の問題から色素法が最も普及している。乳癌の手術において腋窩郭清を行うと、術後の上肢の浮腫や痛みなどの合併症が無視できない頻度で発生するので、郭清が省略できればそのような合併症の頻度は減少しメリットは非常に大きいと考えられる。当院では2003年からこの方法を色素法で導入し昨年は約58%の患者さんがこの方法で手術を受けられた.なおセンチネルリンパ節生検を受けられた方の19%に術中迅速病理診断にて転移が認められ標準的廓清に移行した.

3. 薬物療法
a. 術後療法
乳癌の術後療法に関しては2年に1回スイスのSt.Gallenで行われるカンファレンスで討議され標準的な指針が示されている。当院でもこの指針に従って術後療法を行っているが、インフォームドコンセントを重視し術後療法によるメリットと副作用について十分説明することを心がけている。術後療法は化学療法と内分泌療法があるが、ホルモン感受性のない症例はほとんど化学療法の適応となり、ホルモン感受性のある症例では内分泌療法か、化学療法との併用が行われる。
b. 進行再発乳癌の治療
 進行再発乳癌の治療も新薬の登場でいろいろと選択肢が増加した。治療方針については、Hortobagyiが1998年に発表した考え方があり、ホルモン感受性があり、生命を脅かす転移のないものに関してはまず内分泌療法から開始し、効果が認められなくなった時点で次の内分泌療法に進む。内分泌療法がどれも無効になったり、生命を脅かす転移が認められるようになれば化学療法に移行する。以前は化学療法と内分泌療法を同時に開始する事が多かったのが、同時に行っても生存期間の延長が認められなかった事により現在はこのような治療方針で行うことが一般的となっている。
 進行再発乳癌の治療薬のトピックとしては分子標的薬のハーセプチンの登場があげられる。ハーセプチンは HER2 (human epidermal growth factor receptor2)を強発現している乳癌においてこの受容体に結合して坑腫瘍効果を発揮する薬剤である。化学療法に特有の骨髄抑制、消化器症状、脱毛がほとんど認められないので患者さんのQOLを良好に保つ事が可能である。単独でも抗癌剤との併用療法も可能ですが、生命を脅かす転移でない場合には単独療法より開始し、増悪の認められた場合に抗癌剤を併用するという方針で行っている。

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3.がん化学療法を受ける患者の
悪心・嘔吐による食欲不振へのアプローチ
〜栄養指導課との連携による食事メニューの作成〜

中央病棟3階:仲上直子  井口小百合  高橋ひとみ

はじめに
 化学療法中の食事の必要性や工夫について述べた文献は多いが入院中は、食事の選択肢が乏しく患者個々に食事の工夫を委ねざるを得ないのが実態である。
 今回、がん化学療法を受けた112症例の有害反応を収集、分析した結果、悪心・嘔吐の出現した症例が83例(74%)と高いことが明らかとなった。そこで、経口摂取を促す一助として栄養指導課と連携し、新たな食事メニューを考案した過程と、患者からの反応を報告する。
 <用語の定義>
有害反応:副作用と同義語であり本研究では、悪心・嘔吐、下痢、便秘、脱毛、頭痛、不眠、蕁麻疹、紅斑、発熱、口内炎とした

I.研究方法
研究期間:平成16年4月〜平成17年3月

  • 1.有害反応出現状況の実態調査
    • 1)対象者:平成14年4月〜平成15年12月までの入院期間中、がん化学療法を受けた112症例
    • 2)方法:カルテより有害反応をリストアップし、プロトコール別有害反応の種類と頻度、頻度の高かった症状の持続期間の3つの視点からデータ分析した  
  • 2.食事メニューの作成
    • 1)方法:実態調査で得られた結果から栄養指導課と連携し、化学療法中の食事メニューを考案した
  • 3.聞き取り調査
    • 1)対象者:平成17年3月中新たな食事メニューを提供した患者7名
    • 2)方法:半構成的面接調査を行い、意見を肯定的・非肯定的評価に分けた 

<倫理的配慮>
患者に研究目的・方法を説明し、研究参加・途中辞退は自由であること、拒否しても不利益を被らないこと、プライバシーを保護することを約束し同意を得た

II.結果
 がん化学療法全体の有害反応の出現頻度は、悪心・嘔吐が約5割を占めており、1日から1週間程度持続していた。以上の結果から、栄養指導課と合同カンファレンスを開き、必要な栄養量を可能な限り経口摂取で補い、治療の一環を担うための食事メニューを以下のように考案した。

  • (1)常食では量が多く外見だけで食欲低下につながるので主食、副食の量を半分にした
  • (2)食べ易い形態を考え副食に麺類を取り入れた
  • (3)カロリー補給とメニューが豊富となり変化のある食事が可能となるよう15時、20時に補食、アイスクリームを取り入れた
  • (4)プライバシーに配慮し名前を『化学療法食』ではなく『ハーフ食』と名付けた。また配膳時に患者の状態を把握している看護師が、希望に合わせ品数を調整することにした。
  •  『ハーフ食』を食された患者と面接の結果、「最初の見た目は前の食事より食べられるかもしれないと思った」「名前は他の患者に知られることがないのでよかった」「少量ずついろんな種類のものが食べられたのでよかった」など概ね肯定的評価が得られた。

III.考察
1.栄養指導課との協働性
 栄養指導課と連携し、病院食を工夫することは、以前のような食事の選択肢が乏しく患者個々と家族に工夫を委ねていた実態の改善へと繋がり、さらに患者が長期に及ぶ化学療法を乗り切るためのサポートとなり得る。また栄養量を経口摂取で補うことに視点をおき援助していく事は、看護の基本であり、今後はNST(栄養サポートチーム)の活動へと繋げていきたい。
2.『ハーフ食』へのニーズと個別性
 麺類は、喉越しがよいことや温かい麺ではのびてしまい自宅からは持参しづらいことから、患者の食事の選択肢が増え、食欲不振の改善となり得たと考える。嗜好については家族の協力を得ることも重要なのではないかと考える。

 まとめ

  • (1)化学療法による有害反応は、悪心・嘔吐が多くみられ1週間程度持続する。
  • (2)食欲不振の要因は悪心・嘔吐以外にも考えられるが食事の選択肢を増やすなどの工夫で経口摂取に繋がる。
  • (3)食のニーズは、嗜好や年齢などにより個々に相違するが『ハーフ食』は経口摂取を促す一助となり得た。
  • (4)栄養指導課との連携は、チーム医療の第一歩となる。
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4.平成17年内科入院患者の推移

内科 加堂哲治

 平成16年(2004年)及び平成17年(2005年)の内科入院患者の疾患別内訳は下記の表のごとくであった。
 呼吸器疾患では、肺癌が増加し、気管支喘息が減少した。肺癌は内科的治療目的で近隣医療機関や県立成人病センターから紹介される患者が多く、常に4〜6名が標準治療法に基づき化学療法や放射線療法などを行っている。気管支喘息に関しては、吸入ステロイドの定期吸入の実施で、本院通院患者が重積発作を起こすことはあまりなくなったが、吸入ステロイドが処方されていない近隣医療機関の喘息患者が紹介入院になることが多い。
 循環器疾患は減少している。救急を行っていないことや、侵襲的検査・治療を行っていないためと思われる。
 消化器疾患は総数ではあまり変化がないが、大腸ファイバー検査枠が増加したのに伴い、大腸ポリープ患者が増加した。
 胆肝膵疾患で目立つのは、肝臓癌・C型慢性肝炎の増加である。肝臓専門医が東播磨地域にはあまりいないため肝臓癌に対する経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)や経動脈的塞栓術(TAE)の増加、C型慢性肝炎の肝生検に基づく適切なインターフェロンの導入が増えている。
 腎疾患は、本院には専門医もおらず、透析装置もないため、初期の段階から専門病院に紹介するようになったことが、慢性腎不全患者が激減した理由であろう。
 代謝疾患の代表である糖尿病は、本院で最も積極的に対応している疾患であるが、2005年は入院患者が減少した。これは血糖コントロールやインスリンの導入そして食事療法や運動療法指導が今や一般化してきており、地域の医師会などが中心となり、組織的に糖尿病指導に取り組んでいる。別に専門病院でなくとも、糖尿病の診断・管理は地域の診療所でも十分可能となっている。糖尿病の入院患者が前年に比べ23%も減少したのはこれらの要因によるものと思われる。
 その結果、2004年は全入院患者の17.3%を占めていた糖尿病患者は13.8%に減少し、診療所では積極的治療が困難な肺癌・肝癌・胃癌などの悪性疾患患者が196名(15.3%)と増加してきたのは、各医療機関の機能分担が進んできたためであろう。

内科入院患者
2004年 2005年





総数 1349名 1277名
726名 760名
613名 517名
年齢    男 14〜94歳
15〜97歳

平均  63歳
平均  65歳
       女 15〜94歳
12〜96歳

平均  65歳
平均  66歳






疾患
% %
1 感染症
19 1.4 16 1.3
麻疹 5
0
伝染性単核症 0
4
2 呼吸器疾患
197 14.6 228 17.9
肺癌 41
61
肺炎 80
90
気管支喘息 24
18
3 循環器疾患
148 11 112 8.8
高血圧 64
52
心不全 33
20
狭心症 17
14
4 消化器疾患
268 19.9 278 21.8
胃癌 27
22
食道癌 7
9
大腸ポリープ 81
94
イレウス 23
18
胃潰瘍 18
18
5 肝胆膵疾患
248 18.4 239 18.7
肝癌 49
59
膵癌 12
6
胆嚢胆管癌 13
16
C型慢性肝炎 32
56
胆嚢胆管炎 38
13
6 腎疾患
56 4.3 19 1.5
慢性腎不全 51
8
ネフローゼ 3
5
7 血液疾患
46 3.4 31 2.4
悪性リンパ腫 11
20
8 代謝疾患
236 17.5 179 14
糖尿病 234
176
9 神経脳疾患
87 6.4 90 7
脳梗塞 37
32
脳出血 4
4
10 内分泌疾患
7 0.5 15 1.2
11 アレルギー疾患
2
0
12 膠原病
10 0.7 7 0.5
13 その他
25
63
悪性疾患 181 13.4 196 15.3
糖尿病 234 17.3 176 13.8
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5.外 科

外科 足立確郎

当外科は、今年度スタッフの充実をはかり、現在6名の経験豊かな医師が活躍している。現在のスタッフを紹介する。

足立確郎 (副院長兼外科部長、昭和50年卒)
        消化器外科・一般外科
        日本外科学会指導医・専門医、日本消化器外科学会指導医・認定医、
        日本消化器病学会専門医
佐古田洋子(外科部長、昭和54年卒)
        乳腺外科
        日本外科学会指導医・専門医、日本乳癌学会専門医
白岩 浩  (外科部長、昭和58年卒)
        消化器外科・一般外科
        日本外科学会専門医、日本消化器外科学会認定医、
        日本消化器病学会専門医
西田勝浩 (外科医長、昭和62年卒)
        消化器外科・一般外科
        日本外科学専門医、日本消化器外科学会認定医、
        日本消化器病学会専門医
上田修平 (外科医長、平成7年卒)
        消化器外科・一般外科・乳腺外科
        日本外科学会認定医
殿元康仁 (外科医長、平成11年卒)
        消化器外科・一般外科・乳腺外科
        日本外科学会認定医

また昨年1年間で約560件の手術を施行したが、主な手術症例数を紹介する。

 (平成17年1月〜12月) 

甲状腺の手術      2例 肝癌の手術  4例
乳癌の手術 114例 胆石の手術(腹腔鏡によるもの23例) 33例
胃癌の手術  28例 膵臓癌の手術  1例
大腸・直腸癌の手術  56例 ヘルニアの手術(腹腔鏡によるもの2例) 66例
下肢静脈瘤の手術  4例 虫垂炎の手術  12例
肛門の手術  63例

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6.医療相談室について

 医療相談室  松下昭巳

患者及びその家族からの医療に係わる相談・援助等に対応するため平成15年8月に医療相談室(MSW1名配置)が開設された。
MSWは主に以下のような業務をおこなっている。

  •   * 退院援助
  •   * 受診援助
  •   * 心理的社会的問題の解決、調整援助
  •   * 経済的問題の解決、調整援助
  •   * 地域活動
  •   * 亜急性期入院患者の退院調整

相談件数の約2/3を占める退院援助については、独居や老老介護(全体の4割を占めている)になり在宅困難と考えられる事例が多く、現在の少子高齢、核家族化の社会を反映していると思う。開設当初は急性期を脱して退院支援にはいると「まだ治っていないのに追い出すのか?」といった言葉が患者や患者家族の口から出ていたが最近やっと急性期が落ち着けば長くは入院できない、と理解されてきた。 
介護保険制度は7年目を迎えているが、この制度についての理解は直面して「はて?」という方が殆どであり、まず制度の説明から入ることが多い。5年毎の制度見直しで平成17年10月から介護保険での療養型入所については食費・居住費が自己負担になった。このことで経済的不安を抱えての相談もある。しかし平成18年4月から「がんのターミナル期」が特定疾病(40~64才対象)に加えられたことは、自宅で残された時を過ごすことを選択された65才未満の方にとって経済的な負担、介護者の精神的身体的負担の軽減につながり朗報であろう。
 退院後、自宅での介護力不足で在宅困難との相談を受けたときは情報を収集したうえで介護療養型病院や介護老人保健施設などを探すことになる。現在38万床ある療養型病床は6年後15万床に減らされる。これは施設入所から在宅介護への移行が計られていることであり、ますます地域のかかりつけ医・居宅介護支援センター・訪問看護ステーションなどとの密な連携が必要になってくる。
 相談業務は日頃から院内の他部門及び他施設との連携が大切である。このため院内では加堂副院長を委員長として毎月1回開催されている「地域医療連携会議」に参加している。診療部、看護部、医事課の担当者で構成されており院内外の情報の共有化や問題解決を図っている。また院外では訪問看護ステーション主催の「ステーション連絡会」に担当次長とMSWが参加し各ステーションとの連携を持っている。この会では市役所の介護保険課や福祉事務所からの連絡や指導を受ける場にもなっている。MSWとしての知識の取得や情報交換のため「兵庫県医療ソーシャルワーカー協会」に加入している。              この4月からはMSWが2人制となりフルタイムの対応が可能になった。時には思いがけない相談を受けることもあるが、院内外の関連部署への問い合わせを行い対処している。

17年度の相談件数(総数:839件)と内容分類

  • 退院援助・・・・・546件(65,1%)  
  • 受診援助他・・・・・193件(23,0%)
  • 心理的社会的問題・・・・・65件(7,8%) 
  • 経済的問題・・・・・34件(4%)
  • 地域活動・・・・・1件(0,1%)
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7.緩和医療について

緩和医療科   大林加代子

わが国では人生の中で二人に一人が悪性腫瘍(がん)に罹患し、三人に一人が亡くなり、その数は年間約31万人と、死亡数の第1位を占める時代になっています。さらに人口の高齢化とともに今後も増え続けることが予測されています。 最近の医療においては“おまかせの治療”ではなく、患者自身が主体的に関わっていくことが求められてきており、がんの患者においても同様に治癒が望めなくなり、命に限りがあることに向き合わざるをえなくなった時期に、自らの死をどのように迎えたいかを考え、決断する方がふえてきています。とはいえ、在宅やホスピス・緩和医療病棟での最期を希望する方は多いですが、現実は約83%の方が一般病棟で最期を迎えておられ、ホスピスや緩和医療病棟で亡くなる方は約4%にしかすぎず、死をめぐり医療従事者と対話する機会も少ないものと考えられます。
では緩和医療について簡単に説明します。1990年にWHO (世界保険機構)によりだされた“緩和ケアの提言”に基づき、生命を脅かすような疾患、特に治る見込みのない疾患を持つ患者・家族に対し、

  • (1)全人的ケア(holistic care、全体的ケア)
    患者の苦痛を身体的、精神的、社会的、霊的(spiritual)にも把握し、全人的苦痛として理解し、生きることを尊重し、誰にも例外なく訪れる「死への過程」に敬意を払いながらケアする。
  • (2) QOL(Quality of Life) の向上
    症状緩和による現実の改善と十分なコミュニケーションによって、患者の希望を実に近づけ、最後まで人生を積極的に生きていけるように支える。
  • (3) チーム医療
    患者の種々のニーズを把握し、医師、看護師、薬剤師等のコメディカルのチームアプローチによる方針の一致したケア
  • (4) 継続したケア(シームレスのケア)
    入院と同じ在宅ケアを含む
    診断、治療の開始時より、治癒を目標とする治療(根治的治療)からケアにギアチェンジをする時を含め、継ぎ目のないケア
  • (5) 家族のケア
    病気療養中から死別に至るまで、家族の抱える種々の困難に対処できるように支える
  •  これらを理念とするものであり、知識と技術が重視される自然科学的なものの見方と、人間を理解する人間科学的なものの見方の両者を合わせ持ち、調和させ、チームアプローチにより、全体的に関わっていくものです。 広義には「生活者として地域で暮らす患者の社会性を尊重しつつ、包括的、継続的に見守り、必要な時に適切なサポートを提供していくケア」といえます。 その実現には次のことが重要です。
  • (1) 緩和ケアはどの医学分野においても大切で重要な知識
  • (2) 末期だけでなく、もっと早い病期の患者に対してもがん治療と同時に関わっていくべき(シームレスのケア)
  • (3) 地域における一般病院・在宅での緩和ケアの重要性の啓蒙と普及が必要
  • (4) 一般病院・在宅の医療従事者だけでなく地域住民の意識の変化も大切

 近年、診療報酬上の後押しもあり、ホスピスや緩和医療病棟を持つ医療機関は増加しており、2006年3月現在全国に156施設、2,958病床あり、兵庫県には8施設がありますが、阪神地区に多く、この播磨地区は緩和医療の空白地区となっています。 そこで兵庫県では3年後の県立加古川病院の建て替えにあたり、緩和医療病棟の開設を計画しています。当病院は兵庫県立成人病センターをはじめ、地域の医療機関と連携し、東播磨県域を中心とした県下の緩和医療の充実と緩和医療を必要とする患者・家族の支援の核となるべく、活動の緒に就きました。

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8.腹圧性尿失禁に対するTVT手術について

泌尿器科 田中宏和

はじめに
 今回は腹圧性尿失禁に対するTVT手術について紹介させていただきます。成人女性の3人に1人は尿失禁があるとされています。尿失禁には重いものを持ち上げたり、咳やくしゃみをした時に尿がもれる腹圧性尿失禁と尿意を感じるとトイレに間に合わないでもれてしまう切迫性尿失禁があります。また両方が混在する場合もあります。尿失禁に人知れず悩んでおられる女性はかなり多いと思われますが、恥ずかしさなどのために泌尿器科を受診される方は極めて少ないのが現状です。腹圧性尿失禁は出産や肥満や加齢のために尿道をささえている骨盤の筋肉の働きが低下することが原因で生じます。薬物療法は効果的なものはなく、骨盤底筋体操などの運動療法が効果的とされていますが、効果が得られるまでには時間がかかり持続して行うのは難しいようです。そこで近年では局所麻酔で行え、比較的簡単でかつ効果が高いTVT手術が行われていますが啓蒙不足のためか十分普及しているとは言えません。そこで今回の医療ニュースではTVT手術についてご紹介させていただきます。

手術方法
簡単に言えば両面テープをお腹の皮膚から尿道の裏に通して尿道を持ち上げる手術です。
尿道の裏の膣粘膜を切開して、そこからしっぽにテープをつけた鉛筆の太さぐらいの針を左右6cmぐらい離した恥骨上縁の皮膚に出し、テープを適切な張力でひっぱり、尿道を固定します。
麻酔は局所麻酔と静脈あるいはガス麻酔の併用にて行い、手術時間は約1時間です。

手術実績
現在までに9例経験しています。全症例で尿失禁は完全に消失し、最長観察期間3年ですが再発は認めておりません。幸い大きな合併症は認めておりません。入院期間は日帰り手術も可能と言われていますが、当科では患者様の希望もあり1週間ぐらいです

おわりに
腹圧性尿失禁は女性の尿失禁の7割を占めるとされており、決してめずらしい疾患ではありません。ただ、恥ずかしいという気持ちやあきらめなどから医療機関を受診される方は非常に少ないと考えています。TVT手術は低侵襲でありかつ治療効果も高く、もっと普及してもいい手術であると考えます。普及を妨げているのは他ならぬわれわれ泌尿器科医にあると思っております。兵庫県下ではTVT手術を行っている医療機関は極めて少なく、手術の恩恵にあずかれない患者様が数多くおられると思います。当科ではこれからも積極的に同手術を行っていく所存ですので、もしお困りの患者様がおられましたらご紹介いただきましたら幸いに存じます。

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9.県立加古川病院皮膚科は2006年度から
3つの点が変わりました。

皮膚科 足立厚子

1) 皮膚科医が4人になり、初診外来を設置しました。
外来に初診の患者様専用の初診外来を設置することができるようになりました。
紹介状持参などで精査・加療を必要とする患者様は、本診の前に、予診・至急検査・併科診などをすませておくことができます。軽症の患者様は、初診医にて診察を全て終えて帰っていただくことも可能です。初診時に皮膚生検などの精密検査もしやすくなりました。加古川市・加古郡・高砂市のみならず、姫路市・三木市・小野市・明石市・神戸市など広範な地域から、医療機関の御紹介を通してもしくは患者様から御自身で来院いただいています。2006年4月から6月の初診患者様の人数は1日平均11人(最高19人)でした。

2) 入院病床の増加が可能になりました。
皮膚科医増員も重なり、様々な入院患者様を受け入れることができるようになりました。アレルギー疾患や膠原病・免疫疾患などの皮膚内科的疾患とともに、良性・悪性腫瘍の手術・熱傷などの皮膚外科的疾患にも力を入れることができるようになりました。平成17年度の手術件数は皮膚生検術まで加えると637件でしたが、手術件数は年々増加しています。(別表参照)
高齢化社会になるにつれて皮膚癌の増加が予想されます。皮膚癌患者様の手術・放射線・化学療法などの治療の充実とともに、急性期以降の患者様の長期的観察もさせていただきたいと考えています。皮膚科も緩和医療外来・病棟にも参加していきたいと考えています。

3) 院内標榜を皮膚科から皮膚科・アレルギー科に変更しました。
アレルギー疾患は現代病の一つで増加の一途にあります。皮膚は全身の中でもアレルギー疾患の多い臓器です。当皮膚科は従来より日本皮膚科学会認定教育施設ですが、昨年末日本アレルギー学会より皮膚科・アレルギー科認定教育施設の認定をも受けました。アトピー性皮膚炎・蕁麻疹・薬疹・食物アレルギーなどのアレルギー疾患、水疱症・膠原病・血管炎などの自己免疫疾患について、より専門的な精査・加療をしていきたいと考えています。また当科を受診された患者様の診察のみならず、地域住民の方へのこれらの疾患概念や疾病予防の啓発活動や疫学調査を施行したり、免疫・アレルギー疾患の医療を担う若い医師を育てるというアレルギー疾患教育施設の役割も果たして行きたいと考えています。

項目 外来件数 入院件数 合計件数
デブリードマン    0 11 11
皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部) 141 5 146
皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部以外) 112 15 127
皮膚悪性腫瘍切除術 7 30 37
瘢痕拘縮形成術 1 1 2
全層、分層植皮術(露出部・粘膜部・関節部以外の部位) 0 10 10
全層、分層植皮術(露出部・粘膜部・関節部) 0 12 12
皮弁作成術、移動術、切断術、遷延皮弁術 1 15 16
爪甲除去術 3 0 3
陥入爪手術 53 4 57
組織試験採取、切採法 185 31 216
全合計 503 134 637
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10.サプリメントについて

薬剤部 上田 一一

 薬剤師が病棟での服薬指導の際によくある事柄のひとつに、サプリメントに関しての質問がある。健康志向の高まりともあいまって、今や高齢者のほとんどが何らかのサプリメントを利用していると言っても過言ではない。超高価なサプリメントを多種類愛用されておられる方も多く見受けられる。そこで、私どもも含め何気なく使っている言葉のサプリメントについて少し紹介します。特に今、テレビ等のマスコミによく登場してくる「特定保健用食品」、いわゆる「トクホ」の話を含めて紹介し、最後に今、注目のサプリメント素材についても紹介します。
さて、サプリメントとは何かと言うことになりますが、定義として次のように言われています。「食生活で不足する食品成分、又は通常の食生活に追加して摂取することで健康の維持、増進に役立つ食品成分を含む食品である」、即ち、形状は特に限定せず「健康に役立つ機能性食品」であるという意味合いとなっている。
次に「特定保健用食品」いわゆる「トクホ」であるが、これはサプリメントの範疇に少し含まれるものもあるが、明らかに食品よりのものであり、機能別に見ると次の8つの群に大別される。

  1. おなかの調子を整える食品
    オリゴ糖、乳酸菌、食物繊維の3つがある。
  2. コレステロールが高めな方の食品
    大豆たんぱく質、キトサン、植物ステロールなど
  3. 血圧が高めな方の食品
    かつお節オリゴペプチド、杜仲葉配糖体、γ―アミノ酪酸(GABA)ギャバなど
  4. ミネラルの吸収を助ける食品
    クエン酸リンゴ酸カルシウム、ポリグルタミン酸など
  5. 骨の健康のための食品
    大豆イソフラボンなど
  6. 歯の健康のための食品
    キシリトール、茶ポリフェノールなど
  7. 血糖値が気になる方の食品
    グァバ葉ポリフェノール、難消化性デキストリンなど
  8. 血中中性脂肪値が上昇しにくい食品/体脂肪がつきにくい食品
    ジアシルグリセロール、EPA/DHA、茶カテキンなど

 最後に「トクホ」以外の注目度の高いサプリメントを紹介します。

  1. イチョウ葉
    もともとフランス、ドイツで脳循環改善等の医薬品として開発された。抗認知症作用がある。冷え性にもよい。
  2. ウコン
    カレーのスパイス、ターメリックとして知られている。クルクミンを含み、肝臓保護作用がある。
  3. コエンザイムQ10
    食薬区分の見直しでサプリメント素材として使うことができるようになった食品素材である。心機能を高める効果がある。また持久力増強効果もある。
  4. αリポ酸(チオクト酸)
    抗酸化作用があり、ダイエットにも良いとされる。糖尿病予防などへの効果が期待されている。
  5. L―カルニチン
    心機能を健全に保つ、脂質燃焼を促進する作用等がある。
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11.編集後記

 6ヶ月ごとに発刊しています「県立加古川病院 医療ニュース」も第4号になりました。
 この4月に改定になった診療報酬の「4つの視点」でも、(1) 患者から見て分かりやすい患者の生活の質(QOL)を高める医療を実現、(2) 質の高い医療を効率的に提供するため医療機能の分化・連携の推進などが盛り込まれました。そして「医療連携」を推進する狙いを、診療報酬では急性期病院が連携の中核となるように、地域連携クリティカルパスなどを点数で評価する一方、次の医療法改正では医療連携を法的にサポートしようとしています。今後地域医療連携は急速に進化すると思われます。
 このような状況の中、各医療機関からの情報提供は、まだまだ少ないように思えますが、この「医療ニュース」が県立加古川病院の病診・病病連携の「かけはし」になることを願っております。

平成18年7月  加堂哲治

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〒675-8555 加古川市加古川町粟津770-1

兵庫県立加古川病院

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TEL 079-423-0001  FAX 079-423-3820

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