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兵庫県立加古川病院

医療ニュース

The Medical News

2007年2月 第5号

目次

  1. DEXA(X線骨密度測定装置)の導入
  2. 糖尿病教室について
  3. 大腸癌化学療法について
  4. 悪性黒色腫の治療
  5. 家族の希望により病状告知できなかった患者の看護を振り返って
  6. 間仕切りカーテンの使用状況と患者・看護師間の望むカーテンの位置に対する意識の違い
  7. 患者満足度向上のための接遇改善活動の取り組み報告
  8. 県立新加古川病院の整備について
  9. 編集後記
  10. お問合せ

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1.DEXA(X線骨密度測定装置)の導入

整形外科 角田雅也

平成19年1月より、DEXA(X線骨密度測定装置)が、稼動しています。

骨粗鬆症は国民の健康にとって大きな脅威のひとつであり、わが国においては、2004年の人口換算で、骨粗鬆症の有病者数は、約780万人から1100万人の間と考えられている。骨粗鬆症は年齢とともに有病者数が増加する疾患であり、今後も高齢者人口の増加が見込まれていることより、骨粗鬆症患者の増加は明らかであり、骨粗鬆症の予防と骨折の予防が緊急の課題であることは疑いようがない。総人口に占める65歳以上の高齢者の割合である高齢化率は、平成17年度で19,5%であり、2015年には26%、2050年には35,7%になると予測されている。

骨粗鬆症による骨折としては、大腿骨頚部骨折、脊椎圧迫骨折、上腕骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折等があげられるが、その中で、大腿骨頚部骨折は5年ごとに厚生労働省による全国規模の調査がおこなわれている。それによると、2002年の大腿骨頚部骨折の推定発生数は117900人(男性25300人、女性92600人)となっている。大腿骨頚部骨折は、約10%が1年以内に死亡し、約30%は日常生活動作能力が低下すると言われている。また、脊椎圧迫骨折では、寝たきりとなる可能性があり、橈骨遠位端骨折や、上腕骨頚部骨折では、日常生活の不自由が生じる。これらの骨折の発生数は、手術に至らず、保存的に加療されることも多いことより、発生数を推計することは困難であるが、大腿骨頚部骨折よりもはるかに多いと考えられている。

従って、骨粗鬆症性の骨折の予防には、骨粗鬆症の診断と治療が重要である。
骨粗鬆症の診断には、①問診、②身体診察、③骨量測定、④X線撮影、⑤血液、尿検査を行い、鑑別診断を考慮し、原発性骨粗鬆症診断マニュアルに従って診断を進める。

原発性骨粗鬆症の診断基準では、脊椎X線での脆弱性骨折の有無と骨粗鬆症化、もしくは骨密度値を基準に正常(YAM80%以上)、骨量減少(YAM70-80%)、骨粗鬆症(YAM70%未満)となっている。この骨密度に関しては、原則として腰椎骨密度を用い、変形などのために、腰椎骨密度の測定が適当でないと判断される場合には大腿骨頚部骨密度とするとされている。これらの測定が困難な場合に橈骨、第二中手骨、踵骨を用いるとされている。従って、腰椎あるいは、大腿骨頚部の骨密度を正確に測定することが、骨粗鬆症の診断、経過観察に重要であると考えられる。

骨は骨器質(コラーゲンなど)と骨塩(ハイドロキシアパタイト)からなり、骨量は、それらの総和せある。DXA,QCT、pQCTなどで測定するのは骨塩量(Bone Mineral Content;BMC)であり、それを骨面積あるいは体積で除した値が骨密度(Bone Mineral Density;BMD)である。

このたび、当院放射線科にDEXA(X線骨密度測定装置)が導入され、平成19年1月より稼動する。今回導入された機種(HOLOGIC Discovery Ci)は、ベッドに約10分間程度の臥床で、極めてわずかなX線量で、腰椎、大腿骨頚部の骨密度を測定できる機種であり、極めて再現性の高い機種である。実際のスキャンは1回あたり1分程度であり、同一姿勢を保持しなければならない時間も短時間となっている。

DEXAによる骨密度測定と血液、尿検査、病歴等より、適切な時期に骨粗鬆症としての診断、治療を開始することで、将来における骨折あるいは、痛みに伴うADLの低下の防止の一助になればと期待している。


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2.糖尿病教室について

内科 犬島浩一


 近年糖尿病患者様の増加が話題になっている。当院では以前から多くの糖尿病患者様の外来と入院における診療にあたっている。当院では糖尿病教室は入院中の患者様を対象としたものと、外来の患者様も参加できるものの2つがある。

入院中の方のための糖尿病教室は毎月一回2週間にわたり行われている。当院では2週間入院のクリティカル・パスを使用している。糖尿病の教育に重点がおかれ主に初めて糖尿病と言われた方やもう一度勉強をしたいというやる気のある患者様を対象としている。

教育入院は月数名から十名までである。他院や開業医の先生方からご紹介の患者様もおられる。教育には医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、理学療法士が関わっている。糖尿病全般にわたり、総論、合併症、内服薬、インスリン、食事療法、運動療法、薬物療法、糖尿病の検査、フットケア、低血糖、シック・デイなどについて講義が行われる。また各部署の代表の者が集まり、患者様についてのミーティングが行われ、今後の診療に必要な意見や情報の交換を行われる。このように糖尿病治療はチーム医療の典型である。各部署の協力なしでは成り立たない。また患者様にとって医師、看護師以外の職種の方と接することができる場となっている。また患者様の指導も医師だけでは足りず糖尿病療養指導士の資格を持つ者も教育に関わっている。また2週間の教育が終われば退院される方と引き続き血糖コントロールをされる方がおられる。退院された後は当院外来またはご紹介のあったところに戻られる。

外来の患者様も参加できる糖尿病教室は平成19年1月で第288回を迎える。ほぼ毎月一回行われるので、今年でおよそ20数年から30年以上前から続いていることになる。外来患者様と入院中の患者様を対象としているが、他院通院中の方でも参加していただける。参加費は無料である。日時は毎月の第2ないし第3木曜日の午後1時半から3時までとなっている。医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、臨床検査技師、理学療法士らの講義の後、患者様の集まりの会という形をとっている。講義は一年間で糖尿病の主なテーマを網羅している。昨年では1月のテーマは糖尿病について、2月は糖尿病性神経障害、3月は食事療法、4月は糖尿病性腎症、5月はインスリンについて、6月は糖尿病と心疾患、7月は糖尿病性網膜症、9月はインスリン治療、10月は食事療法、11月は内服治療、12月は運動療法、降圧剤についてである。集まりの会というのは一つのテーマについて患者様同士で話し合い、情報交換しあえる座談会のことである。糖尿病患者様は社会や家庭においても少数派であり互いに支えあい励ましあっていくことが大切と思われるので糖尿病教室のなかにそのような会を設けてある。毎月欠かさず熱心に出席されている患者様もおられる。糖尿病患者が増えていると言われている。

日本人の約一割が糖尿病ないし糖尿病が疑われる状態にあると言われている。今後ますます増えてくると言われている。また最近メタボリック・シンドロームという疾患概念がよく使われている。患者様の生活習慣を見直すためのきっかけと思われる。しかし生活習慣を変えるということは簡単そうにみえて至難の業である。頭でわかっていても今までの生活習慣に流されてしまう患者様が多い。一方的に知識を伝達するだけでなく、医療従事者と患者様との対話、交流、支えあい、患者様同士の横のつながりが大切になってくると思われる。また糖尿病を含めた生活習慣病にはご家族の協力が不可欠である。当院の糖尿病教室は患者様とご家族、スタッフの交流の場となっている。

糖尿病教室は諸先生方そしてスタッフの温かいご指導、ご支援により成り立っている。これからも糖尿病教室について皆様方のご支援、ご指導を頂ければ幸いである。

県立加古川病院 糖尿病教室 年間予定表(平成19年)
                              管理棟 3階 大会議室  13:30~15:00 

日時 担当 講義内容 患者様の集まりの会
288回 1月18日 犬島医師 糖尿病について 今年の私の抱負
289回 2月15日 中道医師 糖尿病性腎症について 私の低血糖対策
290回 3月15日 管理栄養士 食事療法について 私と食事療法
291回 4月12日 大原医師 糖尿病性神経障害について 血糖が上がらない工夫
292回 5月17日 犬島医師
検査技師
糖尿病と動脈硬化について
糖尿病の検査について
私のHbA1cと対策
293回 6月14日 濱田医師
薬剤師
糖尿病と心疾患について
内服薬について
私の血糖値の目標
294回 7月12日 眼科医師
東4階看護師
糖尿病性網膜症について
シックデイについて
私と糖尿病
295回 9月13日 管理栄養士
東5階看護師
食事療法について
フットケアについて
私と外食
296回 10月11日 中道医師
薬剤師
内服治療について
インスリンについて
私と健康補助薬
297回 11月15日 大原医師 インスリン治療について 私のおやつ対策
298回 12月13日 理学療法士
犬島医師
運動療法について
糖尿病についての質問
私の運動療法
                           講義内容については変更することがあります。
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3.大腸癌化学療法について

外科 足立確郎

 大腸癌化学療法は、ここ数年の間に大きく変化し次々と延命効果のあるエビデンスが報告されている。当院でも、進行再発大腸癌の患者さんに対して新しいレジメを採用し、入院・外来化学療法を施行しているが、大腸癌の化学療法について概説する。

  • 1)1957年にHeidelbergerにより創薬された5-fluorouracil(5FU)は、1990年代までの40年間、大腸癌化学療法の基本薬剤として広く貢献してきた。
  • 2)次の化学療法は、biochemical modulationへの発展であり、5FUの効果増強を目的にmethotrexateやl-leucovorin(LV)との時間差投与が行われた。その結果5FU/LV療法は大腸癌の標準化学療法として認められるようになった。
     さらにUFT,TS-1やcapecitabineといった経口フッ化ピリミジン系薬剤も静注療法と比して同等の延命効果が認められ、選択肢の一つとして重要な位置を占めるようになった。
  • 3)2000年にはirrinotecan(CPT-11)+5FU/LVが欧米での大腸癌に対するfirst-line chemotherapyとして認められた。FOLFIRI2と呼ばれるこのレジメは、5FU/LV単独群に比し有意に生存期間の延長を認めた。(FOLFIRI2 17.4ヶ月、5FU/LV単独群 14.1ヶ月)
  • 4)oxaliplatin(L-OHP)は初めにヨーロッパで承認されinfusional 5FU/LVを併用したFOLFOXが1998年に承認された。2004年にはFOLFOX4が米国でfirst-line chemotherapyとして認められた。FOLFOX4の奏効率は45%、生存期間中央値は19.5ヶ月である。
    2005年3月には日本国内でL-OHPが承認され、FOLFOX4が瞬く間に臨床現場に拡大していった。
  • 5)molecular targeted agentの開発が行われ、bevacizumabやcetuximabは、米国で承認されFOLFOX,FOLFIRIとの併用によって、生存期間中央値は20ヶ月を超えるようになってきた。

 恐らくわが国でも2007年度にはbevacizumabが承認されることになると思われる。

 このように大腸癌化学療法は、大きく変化してきており当院では現在、
TS-1,FOLFOX6,FOLFIRI2を施行している。
        
        (参考文献:大腸癌化学療法最近の進歩  石黒 敦他
                癌と化学療法:32巻、13号、2017~2023、2005)


奏効率 生存期間中央値
5FU単剤投与 11% 10.5ヶ月
5FU/LV 31% 14.1ヶ月
TS-1 35.5~39.5% 12ヶ月
FOLFOX4 45% 19.5ヶ月
FOLFIRI 49% 17.4ヶ月
Bevacizumab+IFL 44.80% 20.3ヶ月
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4.悪性黒色腫の治療

皮膚科 藤原規広

                                          
悪性黒色腫の進行程度により4期に分けられる。そのステージングにより治療内容は変化してくる。以下皮膚癌取り扱い規約によるガイドラインについて述べる。

I期
初発部位の腫瘍辺縁より1~2cm離して広汎切除手術を行う。部位によっては植皮手術を行う 場合もある。5年生存率は95~100%くらいで、ほとんど治癒するという良好な予後が得られている。所属リンパ節に転移をきたす可能性は低いが、メラノーマの表皮内癌でもリンパ節転移をきたした報告があるので、可能な限り、センチネルリンパ節生検をすべきである。 術後フェロン局注療法を2-3クール追加するほうが良いであろう。

II期
初発部位の腫瘍辺縁より2~3cm離して広汎切除手術を行い、しばしば植皮手術を行う。最初に転移をきたすであろう所属リンパ節をセンチネルリンパ節と言うが、Ⅱ期ではセンチネルリンパ節生検を全例に行うべきである。センチネルリンパ節に転移があれば、所属リンパ節の郭清を行う。このステージにおいては予防的郭清は必要ないと考える。また、腫瘍の再発や転移を予防するために抗がん剤による化学療法(Ⅱ期ではDAV療法)や、フェロン局注による免疫療法が行われる。5年生存率は70~80%くらいで、多くの患者が治癒し、予後は良好といえる。

III期
腫瘍辺縁より2~3cm離して広汎切除手術を行い、センチネルリンパ節生検を行う。画像上で明らかに所属リンパ節に転移があれば、初回手術より所属リンパ節の郭清手術が行われる。また、腫瘍の再発や転移を予防するために術後抗がん剤による化学療法(DAVもしくはDAC-tam療法)を5クール程度追加する。治療後、腫瘍の再発や転移が発生する確率が高く、厳重に定期検査を行う必要がある。5年生存率は50~60%である。

IV期
遠隔転移をきたしている状態であり、強い化学療法が治療の主な手段となる。DAC-tam療法、CDV療法などにフェロンを追加したレジメが一般的である。その他CDDPに感受性が無いと判断されれば、CBDCAを軸とした化学療法を行う時もある。時には外科的治療を行う時もある。例えば、肺や脳転移に対して手術が可能な場合(転移の個数が少ない、急速増大しない、化学療法に反応性がある)積極的に切除を行い、術後強い化学療法を行う。しかしながら、 手術が可能な場合は少なく、一般に強い化学療法の治療が主体になる。皮膚転移や皮下転移に対してはフェロンの局注療法と、やはり強い化学療法を繰り返し行う。化学療法の奏効率は一般的に20~40%くらいである。その他放射線治療を行う時もある。たとえば多発脳転移、所属リンパ節が大きく腫脹しQOLが低下している状態では良い適応である。5年生存率は10%前後で、現在のところ集学的治療を行い、寿命の延長ができても、治癒することは非常に難しい。最近、新しい免疫療法による治療が試みられようとしているが、良好な結果は得られていない。またこのステージにおいてはオピオイドを中心とした緩和医療が重要である。

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5.家族の希望により病状告知できなかった
患者の看護を振り返って
~今後のインフォームド・コンセントのあり方を考える~

中央病棟5階 大上祐子 木又久仁子 門野留美子

はじめに
A病棟ではがん患者に対して、病名告知は約90%以上の患者に行っているが、病状告知は10%である。今回、急性期病棟で病状を告知されないまま、終末期を過ごす患者とその家族に満足のいく看護が提供できたのかと疑問に思い調査した。その結果、その時の家族の思いや、看護師に求める思いや希望が明らかになり、現在のインフォームド・コンセント(以下ICと略す)のあり方や看護を考え直す必要性が明確になったので報告する。

I 調査目的
入院中の病状未告知患者の家族へのインタビュー調査から終末期患者を持つ家族の療養中の思いを知り、看護師に求める思いや、希望を明らかにし、今後のICのあり方を考える。

II 調査方法

  1. 調査期間:平成17年9月1日~平成17年11月30日
  2. 調査対象:入院中の50歳代、男性、膀胱癌患者の娘2名。
  3. 方法:先行研究の遺族へのインタビュー内容を基に、家族の思いや、医療者に対する思いについて「インタビュー質問内容」を作成した。質問紙に沿って、半構成的面接法を行い、分析はK-J法を用いた。
  4. 倫理的配慮:研究協力者に対し個人が特定されない事、研究への参加は自由でいつでも辞退できる事などを文面・口頭で説明し同意を得た。

III 結果
面接内容をK-J法を用いて、研究者間で話し合った結果、①環境的因子②患者の苦痛③医療者側の因子④家族の思い・希望⑤その他の因子の5つのカテゴリーに分類できた。以下、それぞれのカテゴリー毎の内容について述べる。

①環境的因子では診断がついた時点で、家族のみに病状説明され、患者と家族のコミュニケーションがとれていなかった。患者には病状告知をしていないが、同室の患者同志の言葉から、自分の病状が悪いものだと知っていたようだ。大部屋という環境で患者の病状を隠し続けるのは限界がある。②患者の苦痛では入院中の患者の訴えや思いの表出が少なく、患者の身体的・精神的な問題が引き出せていなかった。③医療者に対しては、病状告知をしないと言う家族の希望に沿って調整していた事を、家族の意向を尊重してくれていると感謝していた。④家族の思い・希望では患者の立場で考えてはいるが、患者の姿を見ると病状の経過の説明をし、今後の人生のあり方を患者に決断させてあげればよかったと思っていた。患者の権利をもっと重視してもよいのではないかという迷いが生じていた。⑤その他では患者が治療拒否し、完治が望めないとしても告知は望まないと強く希望されていた。家族の希望が強い為に、患者の自己決定権が無視されていた。家族の希望を尊重する事で家族は迷いながらも最終的には満足しているという内容であった。

IV 考察
A科の告知の現状は、患者の予後が悪い場合でも外来で看護師の同席がない状況で、家族に告知をしている。この事例でも、家族の希望が優先とされ患者の自己決定権が尊重されていなかった。その為、看護師も患者と正面から向き合うことができず、告知後の患者・家族の思いの確認が充分できていなかった。A院ではがん告知に関する質問用紙がない為、患者の意向を尊重したICができず、医療従事者は家族の希望を尊重し、患者の思いまで把握する事ができていない。小野1)は病状説明の患者ケアにおいて、「患者は何を知りたいと思っているのか、どこまで知りたいと思っているのかを、何をどのように伝えればよいのか、知る事によって何がよい方向にいくのかを考える必要性がある」と述べている。患者・家族と看護師の三者間の調整がとれなかったことが明らかになった。そこで、患者の自己決定権を尊重したガイドラインの作成をする事で連携したチームワークがとれると考える。

V 結論

  • (1)安心して入院生活ができる様に環境調整をする。
  • (2)患者家族の希望を叶える為の連携したチームワークが必要である。
  • (3)がん告知に関する質問用紙の作成と患者の自己決定権を優先したICの実施が必要である。

今回の調査結果を踏まえ、告知の関する意思確認用紙を作成した。院内緩和医療委員会、倫理委員会で検討され、修正後承認された。現在、病歴委員会で実際の運用を含めて検討段階である。この委員会で承認されると、実際に患者さまへの使用を開始することができ、患者・家族にとってよりよい医療を提供するための一手段としてゆきたい。

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6.間仕切りカーテンの使用状況と
患者・看護師間の望む
カーテンの位置に対する意識の違い

中央病棟3階 玉田陽子 阿達伸美 小山美幸 角岡志保 高橋ひとみ

      [Key word : 間仕切りカーテン、入院環境、プライバシー、コミュニケーション]

 はじめに

 入院環境を整えることは看護師の重要な役割の一つである。
ナイチンゲールは「看護覚え書」の中で、看護とは、「新鮮な空気や陽光、暖かさや清潔さや静さを適正に保ち、食事を適切に選び、管理する。すなわち患者にとっての生命力の消耗が最小になるようにして、これら全てを適切に行うことである」と述べている。当病棟の多床室では、間仕切りカーテン(以下カーテン)が閉められ、新鮮な空気や陽光が病室全体に届いていない状況にある。そこで私達はカーテンの使用状況について実態調査を行い、患者及び看護師のカーテンに対する意識調査を行ったので報告する。

Ⅰ 調査方法

  1. 調査期間 平成17年6月~平成17年9月
  2. 調査対象 当病棟に勤務する看護師21名
    多床室入院中の患者62名
  3. 調査方法  
    1)10時・14時にカーテンの位置の実態調査を行った。その際カーテンの位置についてはⒶ全部閉めているⒷ足元を少し開けているⒸ隣のベッドとの間のみ閉めているⒹ枕元のみ閉めているⒺ全部開けていると定めた。
    2)患者・看護師に対して日常望むカーテンの位置とその理由について質問紙調査を行った。
  4. 倫理的配慮
     研究の趣旨を説明し秘密厳守・自由に撤回、拒否出来る事などを説明し同意を得られた患者のみに実施した。

Ⅱ 結果

  1. 実際のカーテンの位置はⒶ30%Ⓑ36%Ⓒ8%Ⓓ16%Ⓔ10%であり、患者の望むカーテンの位置はⒶ6%Ⓑ37%Ⓒ31%Ⓓ16%Ⓔ10%と相違がみられた。閉めている理由としては「落ち着く」48%、「同室者が閉めているから」43%、「隔離された個室空間がもてる」30%であり、開けている理由としては「開放感がある」69%、「風通しがよい」「明るい」63%であった。
  2. 看護師の望むカーテンの位置は、ⒶⒷが0%Ⓒ10%Ⓓ35%Ⓔ55%であり、患者の望むカーテンの位置は、Ⓐ6%Ⓑ37%Ⓒ31%Ⓓ16%Ⓔ10%であった。看護師が開けたいと思う理由として環境面では「窓側以外のベッドが暗い」90%、「換気をしてもカーテンでさえぎられる」60%、安全面では「観察がしにくい」85%、「すぐに異常が発見できない」「防犯上の問題がある」80%であった。開けるように声をかけているのは「環境整備の時」「深夜のラウンド時」「日中の検温時」55%であった。
  3. 日常カーテンの位置をⒹでは男性6%女性94%、Ⓔでは男性18%女性82%と、ⒹⒺにしているのは女性に多くみられた。

Ⅲ 考察

  1. 実態調査および日常患者が望むカーテンの位置をⒶⒷⒸの位置にしていたのは全体の7割を占めている。これらの要因の1つとしてベッドの間隔が狭く、ベッド間のカーテンを共有しているという構造上の要因が考えられる。川口は「ナイチンゲールが提唱するベッド間隔値を試算すると約1.5mと推測できます。」と述べている。しかし、現状は50cm前後であり個人的な関心や議論を行う場面においてとられる対人距離の「個体距離」が不十分であるといえる。これは人間関係の構築がなされていないと不快に感じる距離である。また入院患者はベッド周囲の与えられた狭い場所で多様な生活欲求を満たすことを余儀なくされており、プライバシーの基本的な状態を満たすためカーテンを閉めていると考える。閉めている理由として「同室者が閉めているから」という回答もあり、閉めたいと強く望んでいる訳ではないことがわかる。これらのことから、患者同士のコミュニケーションが円滑に進んでいくよう、看護師の介入が必要であると考える。
  2. 看護師は環境面・安全面を考慮し、望むカーテンの位置をⒹⒺとしている。しかし、患者の望むカーテンの位置はⒷⒸであった。そこには患者同士の人間関係に看護師があまり関わられていない事と、プライバシーへの配慮から個室空間を重んじたためと考えられる。また、看護師はカーテンが閉まっていることで「暗い」という「陽光」に対する関心は高いが、「換気」といった「新鮮な空気」への関心は低かった。ナイチンゲールは新鮮な空気や陽光の必要性について述べており、カーテンを閉めることは新鮮な空気の流れをさえぎる要因になることを認識し、十分な説明をもって、環境調整を行うことが大切であると考える。
  3. 日常のカーテンの位置に男女で相違があった背景には、男性・女性の持つ特性が考えられる。川口の研究では女性はプライバシー意識が高いという結果があるが、女性は周りと交流を持つのが得意であり、男性は言葉が少なく会話が得意ではないといわれている。病棟の特性として乳癌患者が多く、女性同士、同じ疾患に対しての共感がありコミュニケーションがとりやすく、お互いに励ましあうという現状がある。女性がカーテンを開けているのは、女性患者は、コミュニケーションをとることで、同室者との人間関係が早くに構築されているためと考えられる。

まとめ

以上のことから看護師の介入次第で現状を変えることができるといえる。看護師は、新鮮な空気を取り入れるための環境調整を行い、入院時に同室者のカーテンを開け、一人一人自己紹介し会話のきっかけを作るなど人間関係構築への介入が必要である。又、多床室で生活することのメリットを引き出していくことが今後の課題である。

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7.患者満足度向上のための接遇改善活動の
取り組み報告
-ロールプレイングと入退院チェックリストを活用して-

看護部 成田 康子

 当院では、平成14年度から接遇改善のための取り組みを行ってきたが、平成16年度県立病院患者意識調査結果において、「看護師の接遇態度」・「看護の方法や療養生活の支援」は、県立11病院の中で最下位であった。現状把握の結果、看護師への信頼感が低いということが判明し、具体的には、1)患者・家族の医師への要望にきっちりと対応できていない、2)気持ちの良い入院の受け入れができていないという2点が明らかになった。そこで、行動変容につながる接遇改善に取り組んだ結果、平成18年度調査では県平均を上回り、「看護師の接遇態度」は県立11病院中2位、「看護の方法や療養生活の支援」は6位という非常に高い評価を受けることができた(表1参照)。

表1 平成18年度患者意識調査結果(「満足」「ほぼ満足」と解答した者の割合)
設    問 加古川 県平均
問2① 看護の方法や療養生活の支援 94.6 92.6
問2② 看護師の接遇態度 98.0 94.5

平成14年度から接遇改善の取り組みをしていたにも関わらず患者の評価が低いということで、少し、看護サービスにおける接遇の位置付けを接遇委員会で検討した。サービスの構成要素として、近藤隆雄1)は、定常業務サービス・特別業務サービス・潜在的サービスをあげ、定常業務サービスにはコア・サービス・サブ・サービスをあげている。そこで、看護サービスの中のコア・サービスとは、専門職としての自己研鑽を積み、患者ケアに責任を持つことで、患者の疾病からの回復を促すことではないかと考えた。そして、接遇と一般的に言われる態度面は、看護サービスのサブサービスに入るのではないかと考えた(図1)。専門職としての自己研鑽は教育システムとして、専門職として患者ケアに責任を持つことは看護提供方式として別で取り組んできたので、今回は、専門職として患者ケアに責任をもつ対応・態度とはどのようなものかということを考え取り組み、結果として良い評価につながったので、その取り組み内容を報告する。

      図1  看護サービスとしての接遇
   

【目的
患者の信頼感を回復するために看護サービスにおける接遇の意味をふまえ行動変容につながる取り組みを行う。

【取り組みの実際】
患者の看護師への信頼感を回復するために具体的目標として以下の3点をあげて取り組んだ。

  • 1)患者・家族からの質問・依頼・医師への要望には看護師として責任を持って取り組む。
  • 2)目標1)を達成するために具体的場面を取り上げロールプレイを行い、具体的な言葉使い・対応方法を見につける。
  • 3)入退院時の対応マニュアルを作成・実践し、チェックリストにて自己評価する。

1)2)については、各部署で患者のクレームやご意見箱の苦情などからロールプレイの事例を設定し1回/月実施した。その結果、ロールプレイから学んだこと、今後の課題をまとめ、看護長会・委員会で意見交換を行った。3)に関しては、入退院時チェックリストを用いて7月・11月に自己評価を実施した。

【結果】
 ロールプレイの結果、患者・家族の医師への要望に対しては、「医療・看護はチームで行っているという認識の必要性」「チームでの引き継ぎ方法の具体的改善策の必要性」が出された。また、患者の不満を察知したときは、「言い訳はしない」「自分が抜けていたことは真摯に受け止め非を認める」「復唱・質問を繰り返しながら患者の話を聴き、感情を込めてしっかりお詫びする」「自分の対応の癖を知る」などの対応策がでた。また、ロールプレイすることで、「他の看護師の対応が見えて参考になった」「みんなで対応を検討することで自信を持って対応できるようになった」という意見があった。入退院時のチェックリストの7月・11月の自己評価の結果は、点数の向上はなかった。これは、患者からは「入退院時の対応が気持ちよい」という意見を多数いただいた事を勘案すると、各看護師の意識が高くなったため自己評価としては点数の向上につながらなかったのではないかと推察する。

【結論】

  • 1) ロールプレイという方法を取りいれ、みんなで検討したことで、患者の思い・気持ちが理解でき、具体的対応方法が共有でき、自信を持って対応できるようになったことが、看護師の行動変容につながった。
  • 2) 入退院時マニュアルを作成し、「相手をもてなす迎え方」「相手を思いやる別れ方」を具体的行動で示した。わかりやすく、パフォーマンスが見えやすく、患者の反応をその場で実感できたことで、態度で表すことの重要性が理解でき行動変容後の継続への原動力になった。

引用文献
1)近藤隆雄:サービスのデザイン、ハーバードビジネスレビュー、1991

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8.県立新加古川病院の整備について

総務部 河合 一男

県立加古川病院は、施設の老朽化・狭隘化が進んでいることに加えて、糖尿病等の生活習慣病への対応や東播磨地域における救命救急センターの併設など、新たな医療ニーズに対応するため、より高度で専門的な医療を提供する病院として新築整備することとしています。
今春に建設工事着手、平成21年度の開院を目指しています。

1 新病院の概要

  • (1) 基本的な機能 
      政策医療を中心に提供するとともに、地域医療に対する補完機能も担う。
    • ① 生活習慣病(糖尿病、消化器、呼吸器疾患、がん、脳血管疾患等)に対する医療の提供
    • ② 緩和ケア医療の提供 
    • ③ 東播磨地域(北播磨地域を含む)における3次救急医療の提供
    • ④ 感染症医療の提供
    • ⑤ 神経難病医療の提供
    (2) 診療科目  17科
      内科、精神科、神経内科、消化器科、循環器科、外科、整形外科、脳神経外科、心臓血管外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、麻酔科、放射線科
  • (3) 病 床 数  353床
      一般病棟290床、救命救急センター30床、緩和ケア病棟25床、感染症病棟8床

2 施設計画

  • (1) 建設場所 加古川市神野町神野地内(敷地面積 約41,800m2)
  • (2) 構造規模 鉄筋コンクリート造(免震構造)地上6階・地下1階 延床面積 約30,000m2
  • (3) 施設配置 駐車場約500台 ヘリポート バス停留所 タクシー乗降場 等

【完成予想図】

3 整備スケジュール


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9.編集後記

 2007年がスタートし、本院が神野地区に新築移転するまで、後2年あまりになりました。
 新しい病院は、第3次救命救急センター、緩和病棟、1類2類の感染症病棟、神経難病医療そして生活習慣病の全県的中核病院などの兵庫県の政策医療を担うことになっています。この1年は、これらの異なる医療を院内や地域で、いかに調整していくかを決定する重要な時期になります。
 「医療ニュース第5号」をお送りいたします。今回はトピックスが中心ですが、看護部の取組も紹介いたします。各診療科、各部署は自分たちの独自性をいかに作り上げていくのか、新病院も視野にいれ努力しています。これからも色々な機会に本院の情報を提供していきたいと思っております。

2007年1月  加堂哲治

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お問合せ

〒675-8555 加古川市加古川町粟津770-1

兵庫県立加古川病院

編集委員長 加堂 哲治

TEL 079-423-0001  FAX 079-423-3820

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