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兵庫県立加古川病院

医療ニュース

The Medical News

2008年8月 第7号

目次

  1. 平成19年内科入院患者の推移
  2. 外科の業績およびスタッフ紹介
  3. 整形外科・リハビリテーション科
  4. 新病院に向けた地域医療連携部の役割
  5. 平成20年度放射線部門の紹介
  6. 下肢静脈瘤に対する硬化療法について
  7. 外来における糖尿病患者への支援について
  8. 編集後記
 (追録)
  1. 『外科トピックス』
  2. 新病院移転までの整形外科
  3. 皮膚科の新しい取り組み


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1.平成19年内科入院患者の推移

内科 加堂 哲治

 平成19年(2007年)及び平成18年、平成17年の3年間の内科入院患者の疾患別内訳は、下記のごとくであった。
 平成19年の当院の内科診療は、地域の基幹病院の内科勤務医の減少に伴い、入院患者数の増加、重症患者数の増加が目立った。特にもともと患者数の多い消化器系疾患でこの傾向が顕著であった。
 呼吸器疾患では、今年も肺癌が増加した。化学療法、放射線療法、緩和医療が中心で、診断はあまり行っていなかったが、20年度から呼吸器専門医が2名となったため、気管支ファイバーなどの診断も十分できるようになり、肺癌はさらに増加するものと思われる。また最近は終夜睡眠無呼吸検査(PSG)を行っているが、簡易検査だけの平成19年も睡眠モニターやCPAP(持続陽圧呼吸)導入のための入院が23名いた。
 循環器疾患はほぼ例年どおりであった。近隣病院の循環器内科専門医の減少により、一時外来が増加したが、病病連携、病診連携を積極的に推進した結果と思われる。
 消化器疾患では、大腸ファイバー検査の増加により、大腸ポリープが増加したし、大腸癌患者も41名と過去最高であった。また早期胃癌に対する内視鏡的手術(ESD,EMR)もコンスタントに行っている。
 肝胆膵疾患も増加している。特に肝癌は経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)や経動脈的塞栓術(TAE)などを肝臓専門医や放射線科医が積極的に行っているため年々増加している。また昨年目立ったのは膵癌の増加である。化学療法の頻度の増加もさることながら、患者が次第に増加してきている。
 糖尿病診療に関しては、入院患者数にはあまり変化はないが、糖尿病専門医を中心に、糖尿病パスの改革や医師会との糖尿病ネットワークの構築などが具体的に行われており、新病院の機能の1つである生活習慣病センターの中核としての役割が進んできている。
 全体的に昨年は、肺癌、大腸癌、肝癌、膵癌などの悪性疾患の増加が顕著であった。2年前に開設した緩和病床(5床)の運営や緩和ラウンドが円滑に行われるようになったことも要因であるが、患者数の増加や当院での診断技術・内科的治療の進歩が地域で次第に認知されてきたことにもよると考えられる。今後も一層専門性を高め、質の高い医療を提供していきたいと思っている。



悪性疾患 196 15.3 231 17.3 333 21.9
糖尿病 176 13.8 181 13.6 191 12.6


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2.外科の業績およびスタッフ紹介

外科 足立 確郎

 この4月から外科スタッフを1名増員し、合計7名にて紹介患者受け入れ体制を整え、がん患者における手術を中心とした集学的治療、外傷患者・腹部救急等の救急医療、その他手術対象患者の受け入れなどに力を入れている。また退院後の患者フォローについては、地域医療連携をより強くした体制をとっていきたい。
 なお乳腺疾患については、石川医師の転入により佐古田、石川の乳腺専門医2人体制で診療を行うことになった。この事によりこれまでより余裕を持って個々の症例に対処できるようになった。またカンファレンスの充実により診療のレベルアップを目指し当地区の乳癌の拠点となるよう努力していく。


[手術症例](平成19年1月~12月)

甲状腺  5例
乳癌 140例
食道癌    6例
胃癌     38例 (腹腔鏡によるもの2例)
大腸癌    43例 (腹腔鏡によるもの7例)
直腸癌    19例 (腹腔鏡によるもの2例)
肝癌 6例
膵癌 1例
胆管癌 1例
胆石症 72例 (腹腔鏡によるもの35例)
ヘルニア  50例
肛門手術 55例
虫垂炎 8例
その他   43例

[外科スタッフ]
足立確郎 副院長・外科部長 消化器・一般外科
佐古田洋子 外科部長 乳腺外科
白岩 浩 外科部長 消化器・一般外科
石川 泰 外科部長 乳腺外科
西田勝浩 外科部長 消化器・一般外科
殿元康仁 外科医長 消化器・一般外科
吉田優子 外科専攻医


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3.整形外科・リハビリテーション科
~平成19年度の整形外科の実績と新病院移転にむけて~

整形外科 原田 俊彦


 平成19年度の整形外科は医師会および圏域の医療機関の先生方から多数のご紹介を頂き、病床利用率は90.8%となりました(H18年度87.6%)。入院患者の80%が医師会、医療機関からのご紹介患者様です。

[手術実績]
 平成19年度(H19年4月~H20年3月)の整形外科総手術件数は757件でした。平成18年度は633件、平成17年度572件でしたので、ここ数年手術件数は飛躍的に増えています。
 特に脊椎外科(H19年172件、H18年141件、H17年114件)と外傷(H19年165件、H18年135件、H17年107件)、人工関節(H19年76件、H18年56件、H17年32件)、靭帯再建術などの関節鏡手術(H19年60件、H18年47件、H17年68件)などが右肩上がりに増えています。

[手術治療の特徴]
 当科が専門とする脊椎外科では、顕微鏡や内視鏡を使った最小侵襲手術(MIS)が93件と50%を越えています。内訳は腰椎の内視鏡手術(MED)21件、顕微鏡手術56件(Metrx法17件、Casper法20件、MILD法19件)、頸椎の顕微鏡手術(選択的椎弓形成術)15件などです。もちろん全ての脊椎手術がMISの適応となるわけではなくconventionalな手術(頸椎椎弓形成術21件、腰椎開窓術18件)や脊椎instrumentation手術(頸椎4件、胸腰椎20件)などのmajor surgeryも行っています。さらに昨年からは人工関節(TKA、THA)や大腿骨頸部骨折の人工骨頭(bipolar)もそのほとんどがMISで行うようになりました。

[診療の方針]
 このように当科は東播磨圏域の整形外科医療の中核として、入院、手術治療に特化した診療科に変貌しようとしています。従って外来でも初診は紹介患者様を優先し、再診は術後患者様のF/Uに専念し、投薬やリハビリ通院(物療)などの整形内科的なprimary careは医師会の先生方に逆紹介する方針をとっています。

[新病院に向けて]
 来年度にオープンが決まった新病院に併設される救命救急センターでは重傷外傷を中心とした3次救急をメインターゲットとすることが決まっており、これまで以上に整形外科の役割が大きくなるのは確実です。
 新病院では脊椎脊髄損傷や骨盤骨折、多発骨折などで救急搬送される重傷外傷が増加することが予想されますが、整形外科ではこれまで同様に先生方からご紹介いただいた患者様に高度で専門的な整形外科医療を提供し、圏域の整形外科・脊椎外科センター的な役割をさらに高めてゆく所存です。ただ新病院では整形外科病床数が現在の85床から50床と減るため、入院適応は手術治療に限定せざるを得ず、これまでのように脊椎圧迫骨折などの保存的な入院治療をお受けすることができなくなります。また急性期~超急性期病院へ移行するため、術後リハビリも急性期しか扱えず、早期の転院をお願いせざるを得ない状況も予想されます。
 このような状況の中で、現在以上に地域医療連携の重要性が高まると考えていますので皆様のご理解と、ご支援、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
 以下ここ3年間の当科の手術実績を示します。

整形外科手術件数 H19年(1~12月) H18年(1~12月) H17年(1~12月)
総数 705 624 572
脊椎手術 (計)
172 141 114
  腰椎椎間板ヘルニア 61 45 37
  腰部脊柱管狭窄症 50 31 29
  頸髄症(OPLL含む) 32 16 17
人工関節(再置換術含む) (計)
76 56 32
  THA 29 37 11
  TKA 47 19 21
人工骨頭(大腿骨頚部骨折など) 19 21 13
骨接合術  (計)
165 135 107
  大腿骨以外 115 108 80
  大腿骨(頚部骨折など) 31 27 27
靭帯再建(ACL) 10 8 7
関節鏡 50 39 51
手の外科 66 83 53
上肢(肩腱板断裂・野球肘など) 32 37 25
下肢(アキレス腱、外反母趾など) 20 37 44
腫瘍(良性骨軟部腫瘍) 43 28 48


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4.新病院に向けた地域医療連携部の役割

地域医療連携部

 当院では、平成15年8月に医療相談室を開設しました。その後、平成16年4月には地域医療連携部を設置し、当初は一般受診と同様に予約受付を行っていましたが、18年4月より一般受診とは窓口を区別し、検査予約・受診予約の受付を開始しました。
 そして平成20年4月、地域医療連携部に専任の課長が設置され、新病院を見据えたシステム作りと、地域医療連携活動を本格的に行うことになりました。地域医療連携部は、室長(参事兼務)をはじめ、課長(専任1名、兼務1名)とMSW(医療ソーシャルワーカー2名)、事務担当者が配置されています。
 これまでの、患者様の紹介受診や放射線科検査予約の実績は、表1の通りです。また、医療相談室の取り扱い件数(表2)も年々増加し、特に入院患者様の転帰(表3)では、近隣地域診療所等の先生方や地域連携室・相談室、訪問看護ステーションの皆様のご協力を得てそれぞれの所へ連携させていただいていることに感謝しています。
 しかし、当院は平成21年の新病院に向けた取り組みとして、大きな課題を持っています。それは、今以上に患者様の支援を行い新病院の役割を果たすということです。東播磨地域の第三次救急医療の提供には、前方連携と後方連携が大きな要となることは間違いありません。そのため、①患者様やご家族の信頼の獲得(医療連携の中で患者様やご家族に対し、適切な情報提供を行い患者様・ご家族の意思で医療機関が選択できるようになる)、②病院経営の安定と効率化(救急患者様の受け入れ。病棟調整による入・退院日を決めた対応で在院日数の短縮と地域との連携)、③救急医療体制の整備を重点的に行い、地域医療連携部としての役割を担いたいと考えています。
 そして、患者様・ご家族に「ここに住んでいてよかった。」と、実感いただける医療連携を実現できればと願っています。



表1:地域連携室取り扱い内容(件)


初診
予約件数
生活習慣病
外来受診件数
放射線科
予約件数
予約受付数
17年度 448 291 (データ無) (データ無)
18年度 715 433 390 1,595
19年度 1,129 424 518 2,371


表2:医療相談室取り扱い内容(件)


心理的
社会的問題
退院援助 社会復帰
援助
経済的問題
の解決調整
地域活動 受診
その他
合計
15年度 5 109 0 21 0 13 148
16年度 51 286 6 58 8 114 523
17年度 65 546 0 1 1 193 806
18年度 61 920 0 60 5 294 1,340
19年度 76 1,162 0 41 12 406 1,697


表3:医療相談を受けた入院患者の転帰(人)


自宅 一般 医療療養 回復リハ 介護療養 老健 死亡 その他 合計
16年度 59 16 20 3 21 10 125
17年度 113 18 16 8 16 11 181
18年度 125 16 15 15 7 4 18 26 226
19年度 117 14 15 38 2 5 27 6 224


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5.平成20年度放射線部門の紹介

検査・放射線部 田中 雅敏

はじめに
 2008年度にあたり、あらためて放射線部門のご紹介をさせていただきます。

【スタッフ】

  • 放射線科医師(2名)
       石田 淳(高砂市民病院より赴任)
       延原正英(三木市民病院より赴任)
  • 放射線技師(11名)
  • 看 護 師 (5名)

【設置放射線機器】

  • CR(コンピューテッドラジオグラフィ)装置(フジフィルム)
  • X線撮影装置(島津製作所) 4台
  • 乳房撮影装置(島津製作所) 
  • X線骨密度(骨塩定量)測定装置(HOLOGIC)
  • 病室撮影装置(日立メディコ) 2台
  • X線テレビ装置(日立メディコ・島津製作所)2台
  • X線CT装置(東芝メディカル) 2台
     ①8列マルチスライス
     ②シングルスライス(治療計画用)
  • MRI(磁気共鳴コンピュータ断層)装置1.5T
    (フィリップス)
  • ガンマカメラ装置(島津製作所)
  • 放射線治療(リニアック)装置(三菱電機)

【地域医療連携放射線科検査予約】
 平成17年2月より、関係機関の皆様からのFAXによる以下の放射線科検査予約を実施しております。

  • ①CT検査(単純・造影)
  • ②MRI検査(単純)
  • ③RI(核医学)検査
  • ④上部消化管(食道・胃)造影検査

※昨年度までは、検査後、結果のお渡しまで約1時間を要し患者様にご迷惑をお掛けしておりましたが、本年4月からは2名の放射線科医の着任により出来るだけ速やかにお渡しできるように心掛けており、約30分以内にご提供させていただいております。
 また、他の検査に関しましてもご要望がありましたら前向きに対応できるよう取り組んでいきますのでご意見、ご要望をお聞かせください。
 今後とも、ご利用のほどよろしくお願いいたします。

《ご連絡先》
 地域医療連携室
  直通電話:079-456-7225
  FAX番号:079-423-0062

※『放射線科検査予約申込書』は上記までご連絡くださるか、または当院のホームページ内『地域医療連携室』⇒『紹介患者予約システム』の最後で『放射線科検査予約申込書』のダウンロードができますのでどうぞご利用ください。




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6.下肢静脈瘤に対する硬化療法について

皮膚科 福本 毅

[下肢静脈瘤とは]
 下肢の静脈が太く浮き出てきたもので、浮き上がってきた静脈は太くなっているだけではなく、曲がりくねっている。そのため血流に乱れが生じ、下肢が重い、むくむ、だるい、つっぱる、痛い、ほてるなどの感覚が出現し、下肢の筋肉がつる、こむら返りも生じやすくなる。さらに進行すると皮膚炎がおき、色素沈着や潰瘍を起してくることもある。危険因子としては、女性、加齢、親族内発症、妊娠・分娩歴がある、長時間の立ち仕事などがあり、その頻度は、本邦では30歳から50歳で50%の方に、70歳以上では70%以上もの方に静脈瘤が存在しているとの統計もある。

[治療の選択]
1.保存的療法
 下肢静脈瘤はその形態や病期によって、治療法が異なる。クモの巣状静脈瘤web type(1mm以下の細かい静脈がクモの巣状にみえる)や網目状静脈瘤reticular type(2~3mmの静脈が網の目状にみえる)で、初期の静脈瘤には、まず弾性ストッキングを勧める。これは適度な圧力を与えることで下肢に余分な血液がたまることを予防し、深部静脈への血流を助ける。パンストタイプやハイソックスなどの種類があり圧迫力も弱圧・中圧・強圧とわかれている。軽症例ではかなり効果が期待でき、当院では近隣の薬局に数種類のメーカーやサイズを置いて頂き、各人に合わせて選んで頂いている。

2.硬化療法
 保存的療法のみでは無効の場合、クモの巣状静脈瘤web typeや網目状静脈瘤reticular typeの比較的大きなものは、硬化療法の良い適応である。
 硬化療法は、直接静脈瘤に薬(硬化剤)を注射するもので、低侵襲のため通院治療が可能で、仕事や日常生活を中断せずに治療でき、保険適応となったため、費用が安く、術創も少ないという長所をもっている。硬化剤は静脈を癒着させペシャンコにする接着剤の役割をはたす。硬化剤は、ポリエトキシレート・ドデシル・エタノール(ポリドカノール、1~3%)を使用するが、平成15年2月よりmicrofoamにして注入するfoam sclerotherapyが導入された。即ち、泡状の硬化剤が静脈内の血液を駆血し、確実に内膜を損傷することができ、硬化剤が少なくてすみ、また硬化剤の濃度も低くできるため、術後の色素沈着も少なく、血栓性静脈炎も起こりにくい。その結果、静脈瘤は小さく目立たなくなり、血液か溜まらないために、だるさやむくみが無くなる。硬化療法に要する時間は1回が15~30分程度で、1本の脚につき1~2回の治療回数で治療が完結することが多い。硬化療法後2日間は弾性ストッキングによる圧迫を持続し、その後1ヶ月は昼間のみ圧迫を指導している。施行後のフォローアップは特に問題がなければ、1週間以内と、2週間後に受診してもらい患肢の観察を行う。
 最も重篤な合併症としては、深部静脈血栓症がある。それゆえ、瘤内血栓を出来るだけ少なくさせること、および血栓性静脈炎の発症を予防することが大切で、硬化剤の種類、濃度、量の選択、手技、適切な圧迫が重要である。最も高い頻度の合併症は瘤内血栓と色素沈着で、色素沈着の多くは、血液成分の血管外漏出によるヘモジデリンの沈着によるもので、過度の内膜損傷を起こさせないこと、血栓性静脈炎を起こさせないことで予防できる。硬化療法に絶対的禁忌はない。しかし実際には、歩行困難例、重症の全身性疾患合併例、大手術後例、局所の皮膚病変を有する例、ピル服用例、急性期深部静脈血栓症または表在性静脈血栓症例、対象部分の局所感染症例、高度の末梢動脈閉鎖症例、甲状腺機能亢進症例、硬化剤のアレルギー例、妊娠初期または36週以後例は禁忌とされる。



3.手術療法
 ただし局所的な太い静脈瘤の側枝型segmental typeや、大伏在静脈や小伏在静脈に逆流を認める伏在静脈瘤saphenous typeは硬化療法のみでは治療が困難である。この場合は、高位結紮やストリッピング法を行ってから硬化療法を行う。この適応は、静脈瘤の径だけで判断するのではなく、当院では外科と連携して、ドプラエコーを使用し、下肢全体の静脈還流障害の定量的評価や逆流の有無の評価を行っている。
 ストリッピング手術は、悪くなった血管内にワイヤーを通し、ワイヤーを引き抜くことによって静脈瘤を取り去る手技で、大伏在静脈あるいは小伏在静脈を引き抜き、さらに小さい皮膚切開により静脈瘤を切除するものである。多くは全身麻酔や下半身麻酔でおこなわれる。当院でも2週間程度の入院をしていただいている。その後硬化療法を加えて行う。
 患者さんの多様な症状に対し、十分な加療を施行できるために、各科が連携して複数の治療法の適応の把握と治療方法の選択をすることが必要であると考える。当院皮膚科では下肢静脈瘤の診断治療に積極的に参画し、主に硬化療法を担当している。


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7.外来における糖尿病患者への支援について
~地域の中核病院において慢性疾患看護専門看護師が果たす役割~

看護部 小川 静香

1.はじめに
 糖尿病は、生活習慣病の中でも治療が患者の生活と直結しており、患者自身による療養を必要とする疾患である。療養継続のために、患者の生活に関わる看護師の果たす役割は大きい。私は大学院にて専門的知識や技術を学んだ後当院に就職し、慢性疾患看護専門看護師の認定を目指して日々看護実践を行っている。自分が学んだ知識や技術を発揮し、当院にて果たす役割について述べる。

2.糖尿病の治療の目的と看護
 糖尿病の治療の目的は、血糖、体重、血圧、血清脂質の良好なコントロールを行い、糖尿病性細小血管合併症、動脈硬化の発症・進展を阻止し、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、寿命を確保することである。その中で看護が担うのは、患者の生活に目を向け、治療をうまく取り入れ、継続できるよう支援することである。特に日常生活を送っている患者への外来での関わりは重要であり、最近では糖尿病外来や看護相談といった専門外来を設ける病院も増加している。患者と個別に関わり、治療に必要な知識や技術の提供だけではなく、糖尿病という病気をどのように体験しているのか、病気とともに生活をする中で療養をどのように取り入れ、調整しているのか、患者の抱える生活背景について理解するというような支援が行われている。そのような支援を行っているのは、専門的な知識や技術をもった慢性疾患専門看護師、糖尿病看護認定看護師、糖尿病療養指導士であることが多い。

3.当院での糖尿病患者への支援
1) 当院の糖尿病医療の歴史と今後の方向性
 当院は、地域の中核病院として位置付けられ、開設当初から糖尿病に関しては特に力を入れて取り組まれていた。病院の基本方針の一つに「地域の医療連携のもと、生活習慣病の予防と早期発見・早期治療に努めます」と掲げられている。病院の多くが急性期医療に転換する中で、病院の基本方針として、生活習慣病の治療に関する内容を掲げる病院はそう多くはない。さらに平成21年度に移転予定の新病院の機能にも生活習慣病の専門医療が掲げられている。
2)外来における看護の現状
 外来において、糖尿病患者への生活支援は重要であると述べたが、実際のところ、診察室においては看護師以外でも対応できる雑多な業務が多く、患者の話を十分に聴く時間がないというのが現状であり、看護師も決して満足しているわけではない。入院患者に関してはクリニカルパスを用いたチーム医療が行われているが、外来患者においては、個別の栄養指導が行われているのみで、看護相談というような看護が積極的に関われる場もなく、患者の療養を支援するための十分な体制ではない。

4.専門的知識を持つ看護師として可能な支援
1)外来という時間・場所が限られた中で、患者に必要なケアを提供する
 外来診察内の短時間であっても患者の療養の状況や抱えている問題を把握し、適切なアドバイスを行うなどの必要な支援が行えるのが、専門的知識や技術を持ち訓練を受けた看護師であると考えている。私が日々意識して関わるよう心がけ、実践していることである。
2)診察以外に個別に支援する機会を設ける
 診察時間には限りがあり、患者は自分の現在の状態や思いを十分に話せないことも多い。在宅で療養する患者が安全に少ない不安で自己管理が行えるように外来で支援するために、「在宅療養指導」という診療報酬項目がある。対象患者に限りはあるが、業務の合間の関わりに比べ、互いが落ち着いた雰囲気で個別に30分という時間をかけて関わることで、看護師は患者への理解をより深めることができ、患者自身も生活を振り返り、より適した療養方法を見出す機会となる。療養に困った際の窓口となればと考える。また教育入院した患者への退院後の継続的な関わりも重要である。
3) 糖尿病教室で新しい知識や技術を提供する
 地域における糖尿病医療の拠点病院として、新しい知識や技術などの情報を、積極的に外来患者、地域住民に発信していくことも役割の1つではないかと考える。
4) スタッフに対する教育や相談を行う
 専門看護師の機能として「教育」「相談」があり、病院全体として糖尿病患者へのケアが向上していくために、私が持っている知識や技術を伝え、共有していく役割を担うことも必要である。

5.まとめ
 支援内容や考えられる役割は確立したものではなく、まずは、病院の一職員として立脚し、部署の協力を得ながら、医師や他のコメディカルと協働して活動を行う。そして、支援を行う中で思考錯誤を繰り返し修正しながら確立したものとなるように、組織の一員としての役割を果たしていきたい。



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8.編集後記

 新病院の開院まで、後1年余りになりました。新病院の診療機能もほぼまとまり、医師確保、スタッフ教育、運用マニュアルの作成、電子カルテなど幹部職員はてんてこ舞いの状態です。今後地域の医療機関に新病院について状況をご報告すべく、地域の病院を訪問したり、県立加古川病院地域連携会議などを予定しています。
 少し遅れましたが、医療ニュース7号をお届けいたします。今回は平成19年度のデータが多いようですが、新病院は現在の診療をさらに高度専門化することも目指しております。政策医療の3次救命救急医療や生活習慣病医療をはじめ、新病院はさまざまな高度専門医療を展開すべく計画を進めています。しかしこれは地域の診療所や病院のご協力なしでは始まりません。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

平成20年8月   加堂哲治

新病院 平成21年度開設予定

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追録


1.『外科トピックス』

外科 足立 確郎

 今年度10月1日より衣笠章一医師が外科スタッフとして、新しく加わります。衣笠医師は平成4年島根大学医学部を卒業され、食道癌の胸腔鏡手術、胃癌・大腸癌の腹腔鏡手術を中心に多数の症例を経験され、鏡視下手術の権威として活躍されてきました。衣笠医師の鏡視下手術におけるすばらしい技術は、当院においても充分に発揮されるものと期待しています。
 衣笠医師の赴任によって、外科スタッフは下記のごとく9名となり非常に充実いたしました。甲状腺疾患、乳腺疾患、食道疾患、胃・大腸・直腸疾患、肝胆膵疾患、ヘルニア、肛門疾患、下肢静脈瘤と幅の広い疾患に対応いたしますので、患者さまの紹介をよろしくお願いいたします。

[外科スタッフ]
足立確郎 (副院長兼外科部長、昭和50年卒)
消化器外科・一般外科
佐古田洋子 (外科部長、昭和54年卒)
乳腺外科
白岩 浩 (外科部長、昭和58年卒)
消化器外科・一般外科
石川 泰 (外科部長、昭和59年卒)
消化器外科・一般外科
西田勝浩 (外科部長、昭和62年卒)
消化器外科・一般外科
腹腔鏡手術
衣笠章一 (外科医長、平成4年卒)
消化器外科・胸腔鏡手術・腹腔鏡手術
殿元康仁 (外科医長、平成11年卒)
消化器外科・一般外科・乳腺外科
加藤祥穂 (外科専攻医、平成14年卒)
吉田優子 (外科専攻医、平成18年卒)

{外来診察表}
曜 日
1 診 足 立 衣 笠 白 岩 西 田 足 立
2 診 佐古田
(乳腺)
石川
(乳腺)
殿 元 石川
(乳腺)
佐古田
(乳腺)


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2.新病院移転までの整形外科

整形外科 原田 俊彦

 医療ニュース第7号では新病院移転に向けての整形外科の方針につき述べましたが、実際には移転までの約1年間は従来通りの整形外科地域医療を継続することになります。
 ここでは平成20年度上半期(4~9月)の整形外科の現況を報告させていただきます。

[手術実績]
 平成20年4~9月の整形外科手術総件数は387件と昨年同時期と比較して約30件増加しています。年間総手術件数は800件を目標としています。

[脊椎外科]
 脊椎外科は上半期で102件と昨年度よりもさらに増加傾向にあります。先日の読売新聞(7月6日付け)に掲載された"病院の実力-腰痛の手術-"というコラムで、当科のヘルニアの手術件数は兵庫県で2番目に多いことが報道されました。当科では顕微鏡を使用した脊椎の最小侵襲手術(MIS)を多数行っていますが、最近ようやく内視鏡の脊椎手術システム(MED)が導入されました。今後さらに脊椎外科MISのニーズにお応えできると思います。また今年は脊椎固定術の件数が増え、今年度上半期で24件と既に昨年1年間の件数に達しました。最近では侵襲の大きな手術になりがちな脊椎固定術にもMISを導入しており、可能な限り患者様の負担が少なくなるよう努力しています。
さらに新病院では救命救急センターに搬送される脊椎損傷患者の増加も予想されますので、より安全で迅速な手術を目指してナビゲーションシステムの導入を計画しています。
 脊椎外科の担当は原田、高山、青木です。前2者は日本脊椎脊髄病学会認定の脊椎脊髄外科指導医です。

[外傷]
 骨折治療は整形外科の基本ですが、骨折治療のエキスパートは意外と少ないのが現状です。特に骨盤骨折の内固定術ができる整形外科医は非常に少なく、当科の角田はそのうちの一人です。現在、日本骨折治療学会の評議員として、大腿骨頸部骨折のガイドライン作成に関わっています。一般的な骨折から難治性の骨折まで対応可能です。

[関節外科]
 今年度上半期の人工関節手術は36件(股関節12,膝関節24)で、膝関節鏡手術も24件と昨年並みで推移しています。関節外科は角田、青木、堀が担当しています。

[上肢の外科](肩、肘、手の外科)
 当科は肘の離断性骨軟骨炎の症例が多く、高校野球甲子園大会に出場した投手も当科で手術を受けています。最近は肩腱板断裂の関節鏡視下手術が増えており、ここでもMISが主流となりつつあります。上肢の外科は牧野、堀が担当しています。

[クリニカルパス]
 整形外科では新病院での病床数減少やDPC導入に向け、クリニカルパスを積極的に導入しています。整形外科だけで20種類を超えるパスを作成し、在院日数の短縮化を図っています。

[地域医療連携パス]
 今年度から大腿骨頸部骨折の地域医療連携パスの運用を開始しており、今後、加古川市・加古郡医師会で共有できる地域完結型の連携パスを目指して検討に入ったところです。先生方のご協力をお願いします。

[先生方へのお願い]
 整形外科では移転前も、移転後も地域の先生方からの紹介患者様を中心に地域医療の中核診療科としての役割を継続する所存ですので、これまでにも増して患者さまのご紹介をよろしくお願い申し上げます。


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3.皮膚科の新しい取り組み

皮膚科 足立 厚子

1) ケミカルピーリングとは?
 皮膚に化学物質を塗布し、その作用により皮膚表面を一定の深さで剥脱させる新しい手術法です。適応疾患は、光老化(しわ、日光性黒子、 日光角化症)ざ瘡、ざ瘡瘢痕、肝斑、毛孔性角化症、魚鱗癬、表在性色素沈着、開いた毛穴、皮膚のきめ、脂性肌などがあります。ピーリングができる深さは用いる物質により様々で、普及しているグリコール酸ピーリングの利点は、治療効果がある、刺激が少ない、合併症が少ないなどがあげられます。基本手技は、洗顔、ピール剤の塗布、ピール剤の除去(中和、洗顔)、クーリングです。施術後は、感染の予防と炎症を最小に抑えることが必要で、保湿剤、サンスクリーンの塗布が必要です。副作用は、ひりひり感、紅斑、日光過敏、水疱形成、痂皮形成、色素沈着、単純性ヘルペスの再燃、ざ瘡の増悪などがあることがあります。当院皮膚科でも20%および40%グリコール酸などを用いたピーリングを行っています。難治性ニキビやニキビ後の瘢痕が気になる方、くすみや色素斑が気になる方などがおられましたらどうぞご相談下さい。

ピーリング前           ピーリング後



2)下肢静脈瘤硬化療法
 下肢の静脈が太く浮き出て曲がりくねり血流に乱れが生じ、下肢が重い、むくむ、だるい、つっぱる、痛い、ほてるなどの感覚が出現し、下肢の筋肉がつる、こむら返りも生じやすくなり、進行すると皮膚炎がおき、色素沈着や潰瘍を起してくることもあります。当院皮膚科ではポリドカスクレロールによる硬化療法をしています。硬化療法は、直接静脈瘤に静脈を癒着させペシャンコにする接着剤の役割をはたす薬(硬化剤)を注射するもので、低侵襲のため通院治療が可能で、仕事や日常生活を中断せずに治療でき、保険適応となったため、費用が安く、術創も少ないという長所をもっています。当院皮膚科では下肢静脈瘤の診断治療に積極的に参画し、主に硬化療法を担当しています。どうぞお気軽に御相談下さい。

【よくみられる下肢静脈瘤の症例】


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お問合せ

〒675-8555 加古川市加古川町粟津770-1

兵庫県立加古川病院

編集委員長 加堂 哲治

TEL 079-423-0001  FAX 079-423-3820

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